企業・従業員・自治体・健保組合で取り組む健康経営 コミュニティ 健康経営.com

文字サイズ

標準

拡大

健康経営.com

bookinアイコン Twitterアイコン faceアイコン

企業・従業員・自治体・健保組合で取り組む 健康経営 コミュニティ

  • HOME >
  • NEWS / お知らせ

NEWS/お知らせ

86.5%の精度で成功 スマホの履歴で「うつ病」を判断 米ノースウエスタン大

POSTED : 2015.8.19

巷では、改正労働安全衛生法によるストレスチェック義務化(従業員50名以上の全事業所,2015年12月施行)に伴い、様々なサービスが生まれています。当社でも、ストレスチェックを伴った労務環境改善システムを提供しており、お客様から多くの関心を寄せて頂いております。

ところで、ストレスチェックには、大きく3つの方法があると考えられます。

 

1.用紙やパソコンの画面で質問項目に回答してチェック

2.産業医がヒアリングしてチェック

3.スマホやウェアラブルデバイスを用いた常時モニタリングによるチェック

今回は、3.スマホを用いた常時モニタリングについて紹介します。

1.メンタル不調には複合的な要因がある

そもそも、ストレスには大きく外的要因と内的要因があります。外的要因は、暑さや騒音、長距離移動、人間関係(仕事や学校、家庭など)が挙げられます。内的要因は、睡眠不足や夜更かし、妊娠、将来に対する不安、怒り等が挙げられます。

そしてうつ病は、いくつかの要因が複合的に影響して発症する病気です。本人がもつ生物学的要因や心理学的要因が素地としてあり、それに外的なストレスなどの環境要因が作用することで発症が促されると考えられています。厚生労働省は2004年に公表した『うつ対策推進方策マニュアル-都道府県・市町村職員のために―』でうつ病を疑うべきサインを例示しており(以下参照)、住民がうつ病を知り、うつ病に気づき、うつ病に適切に対処できるように、地域保健活動の中でうつ対策に取り組む際の参考となるように情報提供しています。

【うつ病を疑うサイン―自分が気づく変化】

  • 悲しい、憂うつな気分、沈んだ気分
  • 何事にも興味がわかず、楽しくない
  • 疲れやすく、元気がない(だるい)
  • 気力、意欲、集中力の低下を自覚する
  • (おっくう、何もする気がしない)
  • 寝つきが悪くて、朝早く目がさめる
  • 食欲がなくなる
  • 人に会いたくなくなる
  • 夕方より朝方の方が気分、体調が悪い
  • 失敗や悲しみ、失望から立ち直れない
  • 自分を責め、自分は価値がないと感じる など
  • 心配事が頭から離れず、考えが堂々めぐりする

 

【うつ病を疑うサイン―周囲が気づく変化】

  • 以前と比べて表情が暗く、元気がない
  • 体調不良の訴え(身体の痛みや倦怠感)が多くなる
  • 仕事や家事の能率が低下、ミスが増える
  • 周囲との交流を避けるようになる
  • 遅刻、早退、欠勤(欠席)が増加する
  • 趣味やスポーツ、外出をしなくなる
  • 飲酒量が増える など

 

しかし、本人や周囲が常時気を配るのは難しいことです。仕事上のミスや遅刻・欠勤の増加といった明示的な変化ならば気付くかもしれませんが、ほとんどの場合、前兆を見逃してしまう可能性があります。また、因子が多いため、変化に気づいても偶然なのか必然なのか分かりにくく、判断が遅れることがあります。こうした背景から、常時定量的にモニタリングできるデバイスを用いてストレスチェックができないか模索されています。

今回は、米国のノースウエスタン大学が開発したAndroidアプリ「PurpleRobot」を活用した同大の研究を紹介します。

2.PurpleRobotの機能、特徴

graph purplerobot.jpgpurplerobot
図1.PurpleRobotで測定した加速度センサの波形データ

PurpleRobotは、以下の情報を取得します。

・Androidのセンサフレームワーク情報(例:加速度・角加速度、圧力センサ等)

・WifiスポットやBluetoothで接続されたデバイス情報

・5分毎のGPSデータ等の位置情報

・日の出、日の入り、天候等の外部環境情報

・電話の記録やテキストメッセージから得られるユーザーのコミュニケーションパターンに関する統計情報

・暗号化、匿名化される前の個人情報

・SNS上のつながり(例:Facebookのフレンド数など)

これらの情報から、ユーザーがルーティンでしていること、スマートフォンを使う頻度などを把握できます。

3.研究内容と結果

ノースウエスタン大学の研究者らは論文『Mobile Phone Sensor Correlates of Depressive Symptom Severity in Daily-Life Behavior: An Exploratory Study』で、

・既存研究では、スマートフォンで社交性と睡眠状況を測定することが、うつ病の判断に有効であることが明らかになっている。

今回の研究から、GPSデータやスマートフォンの利用履歴から日常の行動パターン・履歴を測定することが、うつ病の判断に有効だった

・2週間のモニタリングから、うつ病の人とそうでない人を86.5%の精度で分類できた

と述べています。つまり、行動の範囲からうつ病か否か判断できる、ということです。なぜなら、精神運動の発達が遅れたり、睡眠時間の変化、快感喪失(以前は楽しめたものに喜びを見出せなくなる状態)が起こることで行動範囲が狭くなるからです。

4.おわりに

上記の研究では、被験者40人のうち有効なデータを取得できたのは28人のみでした。さらに母数を増やして検証する必要があるかもしれません。このような研究はまだ始まったばかりで、アルゴリズムの精度向上とメカニズムの解明は今後さらに進むと思われます。スマートフォンで判断ができれば、うつ病の潜在患者が自身で自覚して生活改善したり、リアルタイムで他者が励まし合うことができますので、ストレスチェックと対策の有用な手段の1つになるでしょう。

課題は、情報セキュリティの確保、プライバシーの保護です。医療情報に近い個人情報が外部に漏れないか、匿名性を確保できるか、そして匿名性を確保できたとしても何らかの方法で個人が特定されないかが心配です。このような製品を欲しいと思うアーリーアダプターは世界の何処かにいるでしょう。しかし、上記の技術的・倫理的問題を解決しない限り、普及は難しいかもしれません。

とはいえ、新しい技術が新たな価値観を作り、新しい価値観が新たな技術を求めるものです。研究がさらに進み、市場の受容性が大きくなるのを期待したいです(おわり)。