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3分の2の重症患者 健診後に受診せず 働き盛り世代は時間の確保が課題

POSTED : 2015.8.20

働き盛りでパフォーマンスが高い30代、40代の従業員は、最も健康や予防に配慮すべき世代です。しかし、この世代は、多忙などを理由に検診や治療を受けず、後に重大な病気を発症する方がいます。健康経営は、企業が従業員の健康増進のために投資することで業績向上と将来医療費の削減をする試みですので、”働き盛り世代”が嬉しさを実感できる取組みにしていく必要があります。今回は、多忙で検診や治療に行けない方の現状を明らかにし、健康経営の実践を通して解決できないか考えます。

1.“働き盛り世代“の実態

“働き盛り”の定義は明確にはありませんが、35歳から65歳までを指すことが多いです。ここでは、30代半ばを過ぎた就業者とします。

labortime図1. 就業者1人あたり平均年間総実労働時間(出所:労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2015』)

図1から分かる通り、日本の就業者労働時間は緩やかに減少してきました。ただ、このデータにはパートタイマーや派遣労働者も含まれており、長時間労働が減ったと断言するのは拙速です。

2013年の調査では、週49時間以上働いた男性は30.5%、女性は9.8%でした。週5日勤務とすれば、1日10時間以上の労働です。通勤に往復2時間かかるとしますと、12時間以上拘束されることになります。また、月に80時間以上残業をした人は男性が10.7%、女性が2.8%でした。週労働時間が50時間を超えると健康への影響が現れ、80時間を超えると脳や心臓疾患が発症した場合に労災認定される可能性があります。つまり、男性の3割は潜在的な健康リスクを抱え、1割は労災認定され得る水準にいます。”働き過ぎ“と言っても過言ではないでしょう。

2005年の同調査から、この働き過ぎ層は「30代から40代の男性」「営業・販売職」「課長クラス」に多いことが分かりました。属人性が高い職種や中間管理職は、労働時間が長くなる傾向があります。近年は共働き世帯が増え、家事や育児の分担量も増えました。また、高齢化が進み、親世代の面倒見や介護をする方も増えています。以前と比べ、多方面から負担がかかるようになったと言えます。

参考記事:在宅勤務 リクルートHD全社員対象に テレワーク推進の目的とは? 

2.突然死のリスク

働き盛り世代はリスクも負っています。何等かの理由でメンタル不調や病気になり働けなくなるリスクや、住宅ローンや教育ローンなど財務的なリスクも負っています。その中で、「突然死」は本人にとっても家族にとっても最大のリスクです。なお突然死は、発症から24時間以内に死亡に至ることで、その原因の約70%が心疾患、約10%前後が脳血管疾患とされ、元来は生活習慣病に起因します。

ある病院が1981年から8年かけて電力会社の19歳から59歳の男性従業員約2万人を6年間追跡調査(*1)した ところ、1.1%がなんらかの理由で死亡し、その内16.7%が突然死でした。特に50代で突然死が急増していました。別の調査 (*2)では、40代の突然死の占める割合が25%以上となり、年齢区分中で一番高くなっていました。単純比較はできませんが、突然死リスクの年齢が下がり、40歳代でも突然死するリスクが高くなった可能性があります。そして近年は、糖尿病予備軍の数が増えており、生活習慣病の裾野が広がったことがその背景にあると考えられます。

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図2.糖尿病予備軍の推計値(出所:平成19年厚労省「国民健康・栄養調査結果」を元に日通システム作成)

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図3.糖尿病が強く疑われる者の推定値(出所:過去の厚労省「国民健康・栄養調査結果」を元に日通システム作成)

図3で糖尿病が強く疑われる者の推計値を世代別で見みますと、40代男性は約60万人(40代男性の約7%)が糖尿病予備軍とされます。定年までおよそ20年残されていることを鑑みますと、本人も企業も早期に対策してリスク低減する事が肝要です。

3.働き盛り世代が通院しない理由

現在、企業では健康診断を実施し、従業員は健診結果について健診機関の医師から説明を受けます。結果が悪い場合は、医師の指導や精密検査を受けることになります。特定保健指導でも同じ流れで行われます。

しかし、実態は異なります。厚労省の調査(*3)によれば、3分の2の重症患者は健診を受けても医療機関で受診していないからです。様々なリスクがあるにも関わらず、なぜ受診や治療をする人が少ないのでしょうか?その要因は、以下が挙げられます。

家庭
・家族が非協力的である
・他に重症者や介護者がいる
・医療費負担が重い

職場
・多忙で残業が多い
・治療のために休暇を取りにくい
・就業時間が不規則
・職場の行事を断りにくい

病院
・予約が取りにくい
・待ち時間が長い
・ゆっくり相談できない
・病院が遠い

ここで着目したいのは「時間」です。時間が原因である場合は本人が物理的に拘束されるため、必然的に通院等が難しくなるからです。特に、「病院の待ち時間」に関する不満は大きいと推測できます。

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図3.病院滞在時間と実診察時間(出所:糖尿病ネットワークニュース 2013年5月23日配信)

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図4. 通院のための時間の作り方(出所:糖尿病ネットワークニュース 2013年5月23日配信)

例えば、ある地域中核病院の糖尿病患者528名を調査したところ、ほとんどの方が通院のために休暇を取っておりました。また、3人に1人が「2~3時間待って診察は10分程度」でした。休暇を取り、長時間待った末に診察が10分程度で終わるのでは、不満が残るのも理解できます。調査では50%の人が「仕事と治療の両立は難しい」と回答しました。実際に、日本では糖尿病患者の4割が治療中断・未治療のままになっています。このように、受診や治療の時間をいかに確保するかが、働き盛り世代の切実な問題と言えます。

4.おわりに

30から40代の働き盛り世代では生活習慣病予備軍が増えており、定年に達するまでに、突然死するリスク、重症化するリスクを負っています。そのため、本人と企業は、重症化する前に治療をして対策する必要があります。

しかし、この世代は働き盛りゆえ、治療や健康維持に費やすことができる「時間の確保」が難しいのが実態です。また、周囲の理解を得ることにも苦労をしています。その結果、検診や治療を断念する方も少なくありません。従業員の努力だけで対処できる範囲に限界があります。

よって企業は、福利厚生施設の拡充や社内運動の実施といった職場環境の整備だけでなく、検診や治療に専念できる勤務体制を構築し、管理職の意識づけも行っていく必要があるかもしれません。各々の従業員の生活スタイルや働き方、勤務状況に応じたサポートも重要になるでしょう。(おわり)。


*1 Journal of Cardiology 20: 957-961,1990
*2 日本災害医学会会誌 Vol.45,No11(1l997)
*3 厚生労働科学研究循環器疾患・糖尿病等生活習慣対策総合研究事業での調査(研究代表者:東京大学政策ビジョンセンター古井特任教授)