企業・従業員・自治体・健保組合で取り組む健康経営 コミュニティ 健康経営.com

文字サイズ

標準

拡大

健康経営.com

bookinアイコン Twitterアイコン faceアイコン

企業・従業員・自治体・健保組合で取り組む 健康経営 コミュニティ

  • HOME >
  • メルマガ関連

メルマガ関連

コラム

POSTED : 2015.7.1

超高齢化社会 

 

 

1.世界に前例のない超高齢化社会

 

戦後我が国は急速な経済発展を遂げてきました。昭和40年代~50年代の高度成長期を支えてきた世代は、団塊の世代と呼ばれました。高度成長期に大都市で就労する労働人口を支えるために、大都市近郊がベッドタウンとして発展した。新興ベッドタウンは大都市を囲んで円状に拡大していったことから、ドーナツ化現象と呼ばれました。また、そのように大都市圏で就労するために地元を離れて親と子の2代で構成される家庭が増え、核家族と呼ばれました。その一方で、地方は過疎化が進みました。

 

いずれも、我が国が経済的に成長する過程の現象であり、団塊の世代もドーナツ化現象も核家族も過疎化もなければ、今のGDP世界3位の我が国の姿は存在していないでしょう。

 

翻って、今、我が国は人口減少社会を迎えています。

 

現在1億2700万人の我が国人口は、2050年には9700万人になると推計されています。また我が国の高齢化率は上昇を続けており、我が国の高度成長期を支えてきた団塊の世代が順次75歳以上を迎えることで今後さらに、加速度的に進んでいきます。

 

現在約2.5割の高齢化率は、2050年には約4割に達すると言われています。

 

これらのことは、我が国の大都市近郊の、ドーナツ化現象によって発展した自治体が、これから2050年に向けて世界に類のない超高齢化都市になるということを意味します。

 

この超高齢化都市は、高度成長期に進展した核家族化の結果、高齢者夫婦のみの世帯、及び高齢者単身世帯を中心に構成されることになり、高層マンションなどに住んで地域社会との関わりが少ない「無縁社会」になると言われています。

 

現在、日本人はすでに8割以上が病院で亡くなっているといわれていますが、大都市近郊では急激に増える高齢者に対応できるだけの十分な数の病院はなく、また「無縁社会」のためかつてのような家族や地域による見守りによる介護の実現も難しく、2025年には医療難民や介護難民が問題となるという、新たな課題も提起されています。

 

その一方で我が国の社会保障関係費は31.5兆円を超え、国の一般会計予算の32.7%を占めるに至っています。

 

平成26年度と平成27年度の社会保障関係費予算を比較しても1兆円の増加となっています。

社会保障関係費の7割以上を年金医療介護保険給付費が占めており、今後高齢化率が高まるにつれ、この支出がさらに増大していくことは間違いないといえます。

 

超高齢化都市で生活する高齢化の方々が安心して生活していただくためのインフラ整備に投入できる国の財源はかなり限られていると言わざるを得ません。

 

そして何よりも重要なのは、これらのことは経済成長や自然災害のような確率に基づく未来予測の話ではなく、すでに存在しているデータから必然的に導かれる確実な未来の姿であるということです。

 

 

2.今、我が国が取り組まなければならないこと

 

このような確実な未来に対して、今我が国が取り組まなければならないことは明確と思われます。

 

高齢者が健康で自立的な生活を営むことができる社会の実現です。政府は今、「健康寿命」という表現を使うようになっていますが、「健康寿命」とは2000年にWHOが打ち出した概念であり「日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間」を指します。

 

厚生労働省の発表では、女性の場合約12年、男性の場合約9年、平均寿命よりも健康寿命が短いことになっていますが、このことは、女性の場合約12年、男性の場合約9年、平均的に介護が必要であるということを意味します。

 

すでに我が国は世界一の長寿国であり、このことは、世界に誇る医療技術、そして国民皆保険制度に基づく公平な医療の提供に基づく、すでに大変素晴らしいことでありますが、そのことは同時に、これから医療費がどんどん拡大し、財源を圧迫していくことを意味します。

 

そうならないためにも、我が国は、「健康寿命」を伸ばし、世界一の健康長寿国を目指してかなければなりません。

 

世界に類のない超高齢化都市が、いきいきと健康的な生活を送る高齢者によって構成されることになれば、紛れもなく世界をリードする健康国、長寿国として、今後日本を追って高齢化社会を迎えることになる世界各国のモデルケースとなるでしょう。

 

我が国が世界一の健康長寿国を実現するために必要なこととして、大きく二つのことが挙げられます。

 

一つ目は、若年層の段階から健康のための適切な知識を習得し、運動・食事によって健康を維持するための生活習慣を確立すること、

 

二つ目は高齢者の方が出来る限り元気で、自立した生活を実現できる地域社会を実現することです。

 

一つ目の「健康維持のための生活習慣の確立」においては、会社などの職場の役割が重要になります。

 

人は壮年期及び中年期の大半を職業に従事する時間として過ごすため、その職場環境を通じて健康のための啓蒙を行うことが最も有効と思われます。

 

すでに一部の大企業では健診の受診率100%を達成しているなど、企業など組織単位の呼びかけで従業員の健康への意識が高まることが期待できます。

 

企業単位で運動イベントを実施したり、社員食堂を通じて健康メニューを提供したり、いくつかの先進的な企業が様々な工夫をしながら従業員の健康増進に努めているが、こういった健康増進を行っている企業は、他の企業と比べて高い労働生産性を実現していることがデータとして明らかになっています。

 

企業の業績向上と社員の健康増進は、労働生産性の向上、社員間のコミュニケーションの促進、定年の延長など様々な意味で相乗効果があるため、多くの大企業が積極的に健康経営に取り組んでいます。

 

二つ目の「高齢者が自立した生活を実現できる地域社会の実現」のためには、自治体の役割が重要になります。

 

超高齢化時代を迎えるにあたって、介護予防や在宅医療の促進などに取り組んでいる自治体も存在しており、そういった自治体の取組事例が『生き活きシニアのつくりかた生涯現役主義』(長崎昇、本田茂樹監修/2013年時評社)、『超高齢化社会第3弾日本のシナリオ』(辻哲夫総監修/2015年時評社)で紹介されているので、ぜひご一読頂きたいと思います。

 

国土交通省の「グランドデザイン2050」の12の基本戦略とともに、千葉県柏市、埼玉県和光市といった都市部近郊自治体、長野県松本市や新潟県三条市といった高齢化先進自治体の取り組み事例が大変わかりやすく説明されています。

 

 

3.高齢化とビジネス

 

さて、ビジネスという観点から見ると、この高齢化という確実な未来が到来するという課題とその課題に対する様々な政府・自治体・企業の取り組みは近い将来の大きなビジネスモデルの転換を意味すると思われます。

 

まず、健康増進が地球環境保護と並んでビジネスにおける主要なテーマとなるでしょう。

 

大企業がサステナビリティレポートなどを通じて地球環境への貢献について対外的に公表するなど、企業経営にとって地球環境の保護はすでに不可欠な取り組みとなっていますが、今後、健康増進も同様の位置づけになってくることは間違いないと言えます。

 

日本政策投資銀行は環境格付と並んで、2011年度から世界で初めて健康経営格付による融資を実行していますが、年々健康経営格付による融資を依頼する企業が増えているとのことです。

 

環境格付にしても健康経営格付にしても、従来の財務諸表による定量的な経営指標とは異なる、企業の定性的な評価指標です。今後、企業は売上、利益、資産、株価といった数値的な指標以外のこういった社会貢献の指標が求められるようになるでしょう。

 

少なくとも自社の従業員の健康増進に取り組むことができていない企業は、立派な業績を上げていたとしても、社会的に高い評価を受けることが出来なくなってくる可能性があります。逆に、人々の健康増進に貢献できる企業は、今後社会的に必要とされるようになり、成長が見込まれるようになるでしょう。

 

次に考えられるのが地域密着型ビジネスモデルの再興です。高度経済成長期後、都市化による都市型店舗と自動車の普及による郊外型店舗が発展し、逆に街の商店街は衰退してきました。

 

しかし人々の健康を考えると、歩いていくことができる商店街の魅力は大きいです。商店街に歩いて通い、同じ地域に住む住民とコミュニケーションをとることは、歩行という運動による健康増進、脳の活性化、地域における見守りなど様々な効用があると言えます。

 

こういった社会のニーズがある以上、地域密着型のビジネスモデルが再び発展することになるでしょう。特に大都市近郊の都市においてはその潜在性は大きいと言えます。

 

その一方で地方都市については人口減少によるマーケットの縮小が解決されない限り、商店街の再興は難しいと言えます。地方の場合は、三条市が取り組んでいる「まちなかで朝ごはん」のようなイベントが求められるでしょう。外出したいけどなかなかその機会がない高齢者が、毎日でなくても安心して参加できる地域交流イベントが各地で開催されるようになれば、地域で高齢者が自発的に健康になり、かつ地域が高齢者を見守る社会が実現できるはずと思います。こういった地域交流イベントもニーズがある限りは将来の新しいビジネスモデルとして成り立ちえます。

 

そして最後に、ICTの健康増進への活用が挙げられます。今大手通信会社や大手システム会社がこぞって健康マーケットに参入を試みています。現時点で、我が国はまだICTによる健康増進が進んでいると言える状況ではありませんが、今後、健康増進のためにICT技術が果たす役割は大きく、それだけにビジネスの潜在性も大きいといえます。

 

しかしながら、ICT技術を活用して健康増進をビジネスモデルとすることには注意も必要です。

 

健康増進のためのICT技術は、文字通り健康を増進するために活用されなければなりませんが、一方で、消費者を対象としたICTサービスは、無料化して広告宣伝で収益を得るビジネスモデルの形態をとっていることが多く、ICTサービスを無料で提供して、消費者にとって効果があるかどうかわからないサプリメントや健康器具を売りつけるようなビジネスモデルになってしまわないことを願います。

 

4.終わりに

 

これから我が国は世界に類を見ない超高齢化社会を迎えます。

 

その超高齢化社会の成功のカギを握るのが、一人一人が自発的に健康になろうとする意識と、一人一人の健康を見守る地域社会の実現です。

 

そして、そのいずれも、公的な資金のみによって実現できるものではなく、民間レベルで担っていかなければなりません。

 

具体的には、高齢者が活き活きと健康的に過ごす地域社会を実現するためのビジネスモデルが必要とされています。

 

超高齢化社会における健康増進と地域見守りは確実にやってくる未来において確実に存在するニーズであり、つまり大きなビジネスチャンスであります。

 

すべての地域・企業・従業員・住民が当事者として、知恵を絞って、世界に誇れる、健康な超高齢化社会を実現していきたいものです。

 

次ページへ