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自治体・国保の取組事例

「スマイル100歳社会」の実現に向けて 神奈川県

POSTED : 2018.10.3

 

kanabou

 

 

1.神奈川県について

 

神奈川県は西部の山地、中央の平野と台地、東部の丘陵と沿岸部と、豊富な地形からなる。県の中央部には相模川、西部には酒匂川が流れ、全国の主な湖の中で7番目に高い位置にある芦ノ湖をはじめ、相模湖、津久井湖、丹沢湖、宮ヶ瀬湖など水資源利用のための人造湖がある。海岸線は426kmの長さで変化に富む景観を持ち、東京湾側の京浜地帯は高度に発達した港湾となっている。

 

また、富士箱根伊豆国立公園の一角をなしている箱根や湯河原の温泉地帯、丹沢の山岳地帯や4つの県立自然公園があり、京都、奈良とともに史跡名勝を有する「歴史の都」鎌倉など、産業、文化とともに豊かな自然環境と観光資源に恵まれた郷土となっている。

 

平成30年7月1日時点での人口は9,181,389人。全国の都道府県で東京都に次いで2番目の人口である。19市、13町、1村の33市町村からなっており、この中には横浜市、川崎市、相模原市の3つの政令指定都市が含まれる。政令指定都市の数として3市を抱えているのは全国の都道府県で唯一である。

 

以上、神奈川県ホームページ(http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f530001/)を参考に日通システム作成

 

 

2.「スマイル100歳社会」の実現に向けて

 

いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、高齢者の弱体化や認知症の増加など、超高齢社会の課題が一気に顕在化する「2025年問題」が危惧されている。

 

神奈川県では、2025年に向けてヘルスケアの分野で先進的な取組を進めることで、超高齢社会の課題を解決するとともに新たな市場・産業の創出を図り、それによって『すべての世代が元気で自立したライフスタイルを実践し、100 歳になっても健康で生きがいと笑顔あふれる健康長寿社会(スマイル100歳社会)』を実現することを目標として定めている。

 

行政における健康・医療の分野と産業振興といった分野はそれぞれ異なる部門が担うことが多いが、神奈川県ではこの2つの分野を兼ね備えた独立の部門として「ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室」を設置している。「ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室」では、医療・保健・健康・産業・先端技術といった分野に包括的・組織横断的に携わり、多様な主体と連携しながら、イノベーションの力で「スマイル100歳社会」の実現に向けて取り組んでいる。

 

「スマイル100歳社会」の実現のために、神奈川県では「最先端医療・最新技術の追求」と「未病の改善」という2つのアプローチを融合させ、持続可能な新しい社会システムを創造していく「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」を推進している(以下図は「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」のイメージ)。

 

healthcare new frontier

(資料出所:神奈川県ホームページ)

 

そして、2018年3月には、この政策が目指す姿、県民メリット、主要目標(2025年)、中間目標(2020年)、具体的な取組等を示した「ヘルスケア・ニューフロンティア推進プラン」を策定した。

 

「ヘルスケア・ニューフロンティア推進プラン」では、生活習慣、生活機能、認知機能、メンタルヘルス・ストレスを重点領域に位置づけ、当該4つの重点領域でのイノベーションの創出に向けて、技術革新、産業化、社会実装の3つの戦術に基づき、未病(ME-BYO)、最先端医療・最新技術、次世代ヘルスケア社会システム、国際展開、ヘルスケアICT、人材育成の6つをそれぞれ施策の柱として定めて、各主体と連携して取組を進めている。

 

smile 100

(資料出所:神奈川県ホームページ)

 

 

以下、6つの柱について、簡単に記載する。

 

※ 詳細については、『「スマイル100歳社会」の実現に向けて- ヘルスケア・ニューフロンティア推進プラン- 』(以下URL)参照

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/prs/documents/plan.pdf

 

1)未病

 

未病とは、『健康と病気を2つの明確に分けられる概念として捉えるのではなく、心身の状態は健康と病気の間を連続的に変化するものと捉え、このすべての変化の過程を表す概念』(神奈川県ホームページより抜粋)である。

 

ヘルスケア・ニューフロンティアではこの「未病コンセプト」を基軸に捉え、エビデンスに基づいた未病指標を県民が活用し主体的な未病改善に向けた取組を行うために、健康や未病に関する知識の普及を図っている。

 

また、県民のライフスタイルの見直しを促進するとともに、行動変容に向けた選択肢を増やすため、様々な分野の企業が参加する未病産業研究会を基軸とした未病改善のための商品やサービスの普及・拡大を図っている。

 

(資料出所:神奈川県ホームページ)

 

 

2)ヘルスケアICT

 

県民が自ら未病指標を活用し主体となって未病改善に向けた取組を行うためのプラットフォームとして、神奈川県では「マイME-BYOカルテ」を開発・運用している。

 

当初はWEBブラウザとしてPC上で運用していたが、スマートフォンの普及に応じてより多くの県民の方に未病に向けた取組を行っていただくために、平成29年度よりスマートフォンアプリでの運用を行っている。

 

「マイ ME-BYO カルテ」は、健康情報を「見える化」し毎日楽しく簡単に健康管理を行う機能を提供することで「未病の改善」を応援するアプリであり、主に以下の機能からなる。(機能説明の文面は「マイ ME-BYO カルテ」 リーフレットより抜粋引用)

 

① スマホを持ち歩けば、毎日の歩数や歩いた距離は自動で記録♪

 

歩数や歩いた距離などの運動量や体重、血圧、心拍数など毎日のからだの状態を一覧で表示。日々の健康管理に役立ちます。

 

(資料出所:「マイ ME-BYO カルテ」 リーフレット)

 

②もらったお薬の情報をQRコードで登録!お薬手帳をスマホで管理できます。

 

薬局でもらったQRコードをスマホで読み取れば、自動でお薬の情報が記録され、面倒な入力作業は不要です。

 

(資料出所:「マイ ME-BYO カルテ」 リーフレット)

 

③災害時や、外出先での急な体調不良の際も安心!大切なあなたの健康状態をスマホから確認できます。

 

災害時や、外出時の急な病気などの、万が一の場合でも、予防接種歴やアレルギー情報などを記録しておくと、紙の記録がなくてもスムーズな支援を受けることができます。

 

(資料出所:「マイ ME-BYO」 カルテ リーフレット)

 

「マイ ME-BYO カルテ」には、他にも、家族管理機能が備わっていて、お子さんが学校で受診する健康診断結果のデータをアプリで管理できたり、電子母子手帳アプリと連携して子育て支援に活用できたりといった機能もある。

 

また情報発信機能があり、自治体から子育てや健康に役立つ情報も配信できるようになっている。

 

※「マイ ME-BYO カルテ」の詳細は以下神奈川県ホームページ参照

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/cnt/f532715/p991437.html

 

 

なお、「マイ ME-BYO カルテ」は2020年までの中間目標として利用者数100万人を目指している。中間目標の実現に向けて、Ⅰ)神奈川県から県民への直接の普及、Ⅱ)市町村を通じての普及、Ⅲ)企業を通じての普及を行っている。

 

後述する県民が参加するかながわトクトクウォークや、企業単位で参加する企業対抗ウォーキングでも、「マイ ME-BYO カルテ」がツールとして活用されている。

 

3)人材育成

 

県民の健康寿命の延伸に寄与するため、新たな技術や社会システムの変革を担う人材の育成を進めている。

 

その一環として、2019(平成31)年に、公立大学法人神奈川県立保健福祉大学に新たな大学院であるヘルスイノベーション研究科(通称 ヘルスイノベーションスクール)の開設を予定している。

 

同スクールでは、イノベーション人材の育成に加え、シンクタンクとして県施策について学術的な研究を進め、県の健康医療施策への反映につながるような提言を実施していくことを目指している。

 

※ 詳細は以下神奈川県ホームページ参照

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/fp3/cnt/f531426/index.html

 

 

4)最先端医療・最新技術

 

2025年を見据えた場合、現在の社会保障制度の仕組みに依存し続けるのではなく、最先端医療の有効性や安全性を検証し、医療・保健に関わる新たな技術の可能性を探っていくことも必要である。

 

そこで、ヘルスケア・ニューフロンティア政策において、ヘルスケア領域における研究開発を支援するとともに最新技術の市場化を促進し、県内における関連産業の集積促進を図ることが「未病の改善」と並んで重要なアプローチとなっている。

 

神奈川県では2016年4月に川崎市川崎区殿町地区に「ライフイノベーションセンター」を開所した。

 

このライフイノベーションセンターを中心に大学や企業等ネットワークの強化を行っており、「かながわ再生・細胞医療産業化ネットワーク(RINK)」設立などを通じてバリューチェーン構築に取組んでいる。

 

※ライフイノベーションセンターについては以下神奈川県ホームページ参照

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/cnt/f531405/p1044967.html

 

そのほかにも、慶應義塾大学等と連携して、産学官が連携した異分野融合プロジェクトとして「リサーチコンプレックス推進プログラム」の展開、「ヘルスケア・ニューフロンティア・ファンド」の組成等を行っている。

 

 

5)国際展開

 

ヘルスケア・ニューフロンティアでは、健康や医療に関する優れた技術を、神奈川県から海外の市場に展開する、あるいは、海外企業の県内誘致や海外企業との事業連携に取り組んでいくことも推進している。

 

スタンフォード大学医学部、メリーランド州政府、マサチューセッツ州政府(以上北米)、セルアンドジーンセラピー・カタパルト(英国)、バーデン=ビュルテンベルク州(ドイツ)、オウル市(フィンランド)、シンガポール政府機関、スコットランド国際開発庁などと覚書(MOU)を締結してヘルスケア・ニューフロンティア実現に関わるテーマでの相互協力を行うなど、アカデミアとの連携に取組んでいる。

 

(資料出所:神奈川県ホームページ)

 

また、平成27年度には、世界保健機関(World Health Organization / WHO)との共催で高齢化に関するシンポジウムを行った他、今も神奈川県の職員として医師が1名、WHO本部の高齢化部門に出向しており、WHOの最新の動向に関するタイムリーな情報入手や連携が出来ている。

 

現在、県内19市町がWHOの「エイジフレンドリーシティ」に参加しているなど、国際的な動きと方向性を併せてヘルスケア・ニューフロンティア政策を推進している。

 

 

6)次世代ヘルスケア社会システム

 

県民の主体的な未病改善を後押しするために、行政や企業等が支える仕組みが必要である。

 

神奈川県発の新しい社会のしくみづくりとして、「神奈川 ME-BYO リビングラボ」を立ち上げ、未病関連商品・サービスの有効性を検証・評価するスキームの構築を行っている。

 

ME-BYO living labo

 

未病関連商品・サービスの機能・効果等を検証する実証フィールドを提供する上で、企業や市町村の抱える健康課題を把握し、それらの課題を解決するための商品・サービスの有効性を実施に企業や市町村で実証していくことが必要となる。

 

そのために、企業に対してはCHO構想(後述)、市長村に対しては国家戦略特区構想等の活用を推進している。

 

 

 

3.「マイ ME-BYO カルテ」と「かながわトクトクウォーク」

 

神奈川県は、プラットフォームとしての「マイ ME-BYO カルテ」を多くの県民に活用してもらい、自ら未病の改善に取り組んでもらうことを目指している。

 

「マイ ME-BYO カルテ」の利用者は平成29年度末に5万人を超えている。

 

しかしながら自発的に「マイ ME-BYO カルテ」を活用している方々は、もともと健康への意識が高い人であると思われ、今後、健康無関心層も含めたより多くの方に活用していただくためには、「マイ ME-BYO カルテ」を利用して未病の改善に向けて行動するための、“きっかけ”を作っていくことが必要であると考えている。

 

そのきっかけの一つが、2018年7月24日から2019年2月28日の間、開催している「かながわトクトクウォーク」である。

 

tokutoku walk

 

「かながわトクトクウォーク」に参加するためには、「マイ ME-BYO カルテ」スマートフォンアプリをダウンロード、ログインし、画面上部のキャンペーンバナーをタップし、参加登録を行うのみである。

 

スマートフォンを持ち歩いていれば、「マイ ME-BYO カルテ」が自動で歩数を計測し、集計を行う仕組みになっており、自分でデータを入力したり、送信したりする必要はない。

 

集計期間中に平均歩数5000歩以上を達成した方を対象に、抽選を行い、合計10,000名に豪華賞品がプレゼントされる仕組みになっている。

 

tokutok walk

(資料出所:神奈川県ホームページ)

 

※かながわトクトクウォークの詳細については以下神奈川県ホームページ参照

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/mymebyo/walking.html

 

 

4.CHO構想

 

CHO構想とは、企業や団体が事業所に健康管理最高責任者(Chief Health Officer / CHO)を設置し、従業員やその家族の健康づくりを行う取組である。つまり、「健康経営を推進する」ことを意味するが、神奈川県では、CHOという役割をもって、責任をもって健康経営の旗振り役を担ってもらいたいという思いを込めて、CHO構想としている。

 

神奈川県では平成26年に「CHO構想推進コンソーシアム」を設立し、企業に実際に健康経営に取り組んでいただきその効果を検証する事業を行ってきた。また、「マイ ME-BYO カルテ」を健康経営推進のためのツールとして活用し、従業員の日々の健康管理に役立ててもらうといった形での支援も行っている。

 

CHO

(資料出所:神奈川県ホームページ)

 

また、CHOを設置して健康経営に取り組む企業や団体の県内事業所を「CHO構想推進事業所」として登録する制度も行っている。

 

この制度は、まだ健康経営への取組実績がなく、「これから健康経営を行う」という企業も参画できる仕組みになっている。

 

CHO構想推進事業所として登録した企業には、登録証やステッカー、名刺に刷り込めるイメージロゴを配付している。

 

(資料出所:神奈川県ホームページ)

 

また、CHO構想事例集を発行し、CHO構想推進事業所の中から、健康づくりの取組事例の紹介も行っている。

 

さらに、健診結果を入力すれば、県が事業所の従業員の健診結果の平均値と神奈川県内企業の健診結果の平均値とを比較することができるように分かりやすくグラフ化して結果を返すことも行っている。

 

※ CHO構想事例集については以下神奈川県ホームページ参照

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/cnt/f532717/p993738.html

 

また、従業員の健康づくりに関心のある県内の業界団体等に、県職員と中小企業診断士等の専門家が訪問し、職域での効果的な健康づくりについて説明する出前講座を行っている。

 

神奈川県では、昨年度「マイ ME-BYO カルテ」を活用して、企業・団体の従業員とその家族を対象とした「企業対抗ウォーキング」を行い、今年度も実施予定である。

 

参加企業ごとの平均歩数ランキングを県のホームページで公表し、ランキング上位企業には県から表彰状を贈呈している。

 

※企業対応ウォーキング ランキングについては以下神奈川県ホームページ参照

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/cnt/f532717/p1182019.html

 

企業対抗ウォーキング参加事業所の従業員の場合は、併せて「かながわトクトクウォーク」に参加することも可能である。

 

 

5.企業との連携

 

神奈川県では、ヘルスケア・ニューフロンティア政策を推進する上で、企業と連携した取組も積極的に推進している。以下、その例を記載する。

 

1)ME-BYO de Pokémon GO

 

位置情報ゲームアプリ『Pokémon GO』とコラボした、市町村がおススメするウォーキングマップを作成し、県内の市町村窓口などで配布している。「マイ ME-BYO カルテ」に体重や血圧を記録すれば、ウォーキングの効果が見える化できる。

 

ME-BYO Pokenmon go

(資料出所:神奈川県提供)

 

Me-BYO Pokemon GO

(資料出所:神奈川県提供)

 

2)ABC Cooking Studio「未病を改善する」レシピ

 

神奈川県と株式会社ABC Cooking Studioは、平成26年12月18日に「食」を通じた「未病」の概念の普及・啓発等を目的として覚書を締結、株式会社ABC Cooking Studioが開発した「未病を改善する」ための様々なレシピや健康にまつわるコラムを毎月情報発信している。

 

※詳細は以下神奈川県ホームページ参照

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/cnt/f537043/p1202184.html

 

 

6.インタビューを終えて

 

神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室にお伺いし、インタビューをさせていただいた中で、最も衝撃を受けたのは、「県内19市町がWHOのエイジフレンドリーシティに参加している」ということである。

 

超高齢社会を迎え、また2025年問題を控え、健康づくりはあらゆる自治体にとって重要なテーマであるが、国際的な方向性を踏まえた取組を意識している自治体は全国でもまだ限られていると思われる。

 

神奈川県内だけで、これだけ多くの市町がWHOの取組に参加していることに、県レベルで高い目標を掲げることの重要性を感じた。

 

神奈川県では、1)県民、2)市町村、3)企業の3つのアクセスルートで取組が行われており、それぞれのアクセスルートで共通して、「未病の改善」を実践するための具体的なツールとして「マイ ME-BYO カルテ」を活用することができる環境が提供されている。

 

当事者が異なることで施策の内容も方向性もバラバラになりがちであり、またたとえバラバラになったとしても問題ないと思うが、「マイ ME-BYO カルテ」という一つのプラットフォームを共有することで、たとえ取組の内容が異なっていても、最終的に同じ方向に向かうことができると感じた。

 

また、個人によって健康状態も異なれば、健康への意識も異なることが、健康づくりの施策を遂行する上で難しい点であるが、「未病の改善」という表現は、個人への負担感がなく、より多くの人が参加しやすい呼びかけであると感じた。

 

以上 日通システム