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企業・健保の取組事例

あいちヘルスアップコンソーシアムの挑戦

POSTED : 2015.7.6

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(写真撮影:2015年6月23日あいちヘルスアップコンソーシアム定例会より)

 

2015年6月23日に愛知県名古屋市にある愛知県立大学サテライトキャンパスで開催されたあいちヘルスアップコンソーシアムの定例会後、コンソーシアムの主催者・事務局である岡本教授、高山研究員、長谷川コンサルタントにインタビューを実施しました。

 

<インタビューさせていただいた方々>

愛知県立大学 看護学部教授

疫学・公衆衛生学 医学博士 岡本和士様

 

独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進研究部

協力研究員 高山光尚様

 

日本事務器株式会社 事業推進本部 産業ソリューション事業推進部 特定事業推進グループ

コンサルタント 健康管理士一般指導員 長谷川亮様

 

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日通システム:

岡本先生は、健康経営についてどのようにお考えでしょうか?

 

 

岡本教授:

私はビジネスにおける一番の中核が健康だと思っています。人がしっかりと働いているから事業が成り立つ。人は健康でないと、働けない。だから、これからの会社は健康が中心にこないといけないんじゃないかな、と考えています。

従業員としては、会社が自分達の健康を考えてくれると、「そこまで考えてくれるならば、がんばらなければいけないよね」とモチベーションが上がり、モチベーションが上がれば生産性も上がる。会社としては、一生懸命働いて利益を生み出してくれる従業員のために、従業員の健康を守る。健康で働いてくれる従業員が増えれば、会社の収益も上がる。会社の収益が上がれば、従業員にも還元されて、従業員もますますモチベーションが上がる。特に今、就職先を探すときに就職先がブラック企業かどうかということが一番気になる。でも、従業員の健康を大事にしている企業だったら、従業員の健康のために「こういうことをやっていますよ」ということを発信することができ、会社のステータスにもなり、いい人材が集まる。

こうやって、いい循環を生み出していくのが、健康経営ではないかな、と思います。日本企業の場合、昔から「従業員は健康で働き続けるのが当然」という幻想をもっているところがあります。病気で会社を休むと、何か悪いことをしているような錯覚をもってしまう雰囲気があるが、それはおかしいと思います。会社が「どうして病気になるんだ」という発想を持ってしまうと、「どうせ歯車の一つに過ぎないんだな」と従業員は思ってしまい、モチベーションは下がる。そうではなく、ビジネスの中心に健康をドンとおいて、そしてそれを大事にする。それが、健康経営だと思います。

 

 

日通システム:

すでに健康経営に取り組んでいる大企業は多いですが、中小企業にとってはなかなか取り組みにくいと思います。健康経営は中小企業にも普及するのでしょうか?

 

 

岡本教授:

私は中小企業ほど、ビジネスの中心に健康を置かなければならないと思います。零細企業になると、みんながプレーヤーで、9人ギリギリの野球チームで一人でも欠けたら野球ができない状況にあります。しかし中小企業の場合は、関心が「健康」でなく、「利益」にあることの様に思われます。つまり、日々、お金を回していかなければならない中で、利益ばかりに目がいってしまっている。例え会社の収益が上がったとしても、9人ギリギリで働き続けて、それぞれの健康状態が悪い状態だったら、会社は大きくなっていきません。従業員の健康がおちれば、アウトプットの質がおちます。製造業ならば品質がおちます。そうするとクレームが起きて、対応のために結局時間は倍かかります。健康状態が悪いにもかかわらず、倍の時間をかけて、そして収益がおちれば、従業員としても「こんな会社やっていられん」という気持ちになります。

実は、中小企業ほど、一人一人の健康をしっかりと見て、大事にしてサポートしてあげることが、メリットにつながりやすいはずです。中小企業が健康経営に注力すると、いい人材が集まり、いい評価を得る。従業員を大事にしている会社は、従業員が会社を大きくしてくれます。そもそも、人は「働け、働け」といわれると、働きたくなくなるものです。むしろ、収益を上げたいならば、まず、従業員を大事にすべきだと思います。

 

 

日通システム:

中小企業が健康経営に取り組むためには何が必要なのでしょうか?

 

 

岡本教授:

まずはお互いの気持ちが分かる職場をつくることだと思います。中小企業の場合はそれぞれが専門特化していて、なかなか相談できる人がいません。もし相談できる人が近くにいれば、「困ったら聞けばよい」と思うことができる、これだけでも全然違うと思います。さらに、「ようやったな、がんばったな」とやったらやった分だけ評価してくれれば、モチベーションが上がると思います。そうすれば、誰も、「歯車の一つ」なんて思わない。そういった、些細なことが、健康経営の第一歩だと思います。

 

 

日通システム:

あいちヘルスアップコンソーシアムには中小企業の製造業も参加されていますね

 

 

岡本教授:

元来、中小企業の方が、健康経営には取り組みやすいのです。トップダウンで取り組める。でも、中小企業にとっては、何からどうはじめたらよいか分からない。そこであいちヘルスアップコンソーシアムのような組織に参加されれば、いろんな情報を得ることができます。

中小企業の社長が、「うちは大丈夫」と思っていることが、実はそれが問題です。いい部署もあれば、悪い部署もあるのですが、経営者にはなかなか細かいところまで目が届きません。そこで、あいちヘルスアップコンソーシアムの「健康度調査票」によって分析をすると、実は部署や事業所間で大きな違いが出てきます。そこで背景要因をさらに調べると、改善ができます。

あいちヘルスアップコンソーシアムには、健康経営に取り組んでいる大企業もたくさん参加していますし、健康経営のためのシステムを提供している企業やツールを提供している企業も参加している。スポーツジムを経営している企業も参加している。自治体も、医師会も、保健師も参加している。あいちヘルスアップコンソーシアムに来れば、他の会社と比較して、自社はどうなのかという気づきを得る機会もありますし、どういうツールやシステムを使って、具体的にどうやって取り組めばいいかというアイデアも得ることができます。

 

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(写真撮影:2015年6月23日あいちヘルスアップコンソーシアム定例会より)

 

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(写真:愛知県立大学 看護学部教授 疫学・公衆衛生学 医学博士 岡本和士様)

 

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(写真:独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進研究部 協力研究員 高山光尚様)

 

 

日通システム:

あいちヘルスアップコンソーシアムの設立の背景を教えていただけますか?

 

 

岡本教授:

もともと、高山さんとずっと昔から「会社は従業員を健康にするということをもっとやっていかなければならない」という話をしていました。まずは事業主としての法令遵守、そのためには、それを「見える化」していかなければならないですね、ということで、「健康度調査票」を作成したことがきっかけです。「健康度調査票」を使って、会社の問題点を見つけて、PDCAを回してもらおう、それが最初の目的です。

 

 

日通システム:

今のように健康経営に取り組む企業が大企業・中堅企業・中小企業含めて、毎回10社を大きく超えて集まるようになるまでの経緯を教えていただけますか?

 

 

岡本教授:

あいちヘルスアップコンソーシアムは、みんな手弁当で参加してくれています。そういった企業がこれだけの数集まるようになったのは、共感してくれる企業が一社一社増えてくれた、それに尽きます。それはすべて、高山さんの尽力のおかげです。高山さんが一社一社声をかけてくれたおかげでここまで大きくなった。

ただ、おもしろいのは、私は30年以上産業医をやっていて、私が産業医として毎月訪問している企業同士は、これまで一切交流がなかったのが、こうやってヘルスアップコンソーシアムが出来てから、私が産業医を勤めている企業同士の交流が始まったことです。従業員を健康にしたいという想いをそれぞれがもともと持っていて、コンソーシアムができて、それぞれの企業のベクトルがコンソーシアムを通じて具体化して、ベクトルとして一致した、そんな状況だと思います。

 

 

高山研究員:

岡本先生が長年、愛知県で産業医として様々な企業の従業員の健康に取り組まれていて、その信用力が大きいと思います。それがあって、皆さんの間で少しずつ活動が広がっていった。ヘルスケアの分野で研究活動をしている大学の先生は他にもいらっしゃいますが、岡本先生の場合は研究だけでなく、現場でも活動されている。現場と研究の両方をされている先生はなかなかいないと思います。企業が、ボランティアであるにも関わらず、それぞれ自発的に集まってくれるのはこういった研究の部分と現場の部分の両方の視点から、何かしら得るものがあるからだと思います。

 

 

日通システム:

政府としても、健康増進が大事、中小企業が大事、地域での取組が大事、ということをずっと前から言っていて、様々な補助事業を行っていますが、あいちヘルスアップコンソーシアムはそのいずれとも関連しているにもかかわらず、政府の補助は受けていないのですね。

 

 

岡本教授:

そうです。青森県から参加してくれている企業も、東京から参加してくれている企業もみんな手弁当です。このコンソーシアムの目的を理解し共感し、本当に会社を元気にしたい、健康にしたいという想いで集まった、メンバーが自発的に盛り上げてくださっています。

 

 

高山研究員:

岡本先生とは一緒に、地域ヘルスケアに取り組んできた中で、薬局を使って地域ヘルスケアのハブづくりをやろうとしていました。当時は時期尚早で、薬局は重要性を認めてはくれても、処方箋作成に追われていて薬剤師を出してまでといった協力は得られませんでした。来年以降、健康サポートの役割を重視した法改正が検討されています。

私の場合、実は数年前に、青森県で経済産業省の補助事業を行ったことが健康経営に取り組む最初のきっかけです。経済産業省から補助金をいただき、「あおもり健康増進コンソーシアム」の一員として青森県下の企業を中心とした社員の健康増進実証事業を行いました。その時から、最初から全国区を視野に入れていました。その際のノウハウを使って、あいちヘルスアップコンソーシアムをやりましょう、ということになりました。ヘルスケアはやはり、地域密着型の地場産業だと思い、ドミナントでやっていこうと。

 

 

岡本教授:

地域でやる、そのためにはみんながボランティアでなければなりません。草の根運動でボトムアップしていくことが大事です。

特に、中小企業の場合は、地域のコミュニティの中で存在しています。従業員かつ住民という考え方に立つと、地域・職域という言い方はおかしくなります。コミュニティケアという考え方に立てば、愛知県に限らず、いろんな地域で同じ取り組みができると思います。まず愛知県で成功して、他の地域に広がって、それが全国規模になっていく。そうすれば国民がみんな健康になると思っています。

 

 

日通システム:

コミュニティという立場に立った場合、競合企業同士も存在していると思います。地域でやるとなると、企業間の利害など、いろいろと難しい問題も出てくるのではないでしょうか?

 

 

日本事務器 長谷川コンサルタント:

弊社は、あいちヘルスアップコンソーシアムの幹事会社を担うに当たり、岡本先生の想いを受け、まずは「社会貢献」の一環として取り組んでおります。

事業主の方々が、自社で働く方達の健康に目を向けもっと力を入れていく、そして健康投資を経営戦略として捉える「風土づくり」も重要であり、このコンソーシアムの皆さんの目指す方向は同じだと思っています。この幹がしっかりしており、更にはコンソーシアムでの実証や討議が自社サービス・事業推進の向上にも寄与できる事から、たとえ競合企業同士であろうと利害は調整できると思っています。

 

 

日通システム:

個人の方も参加されていますね。

 

 

岡本教授:

参加資格は、意識だけです。意識さえあれば、企業だろうと、自治体だろうと、医師会だろうと、個人だろうと、どんな立場でも参加できます。

こんなコンソーシアムは他にはないと思います。オブザーバーでもよいので入ってもらう。従業員が健康になれば、国民が健康になります。そうすれば、医療費も下がります。

企業にとっては、自社だけでは、何が問題か分からない、何をやればいいのか分からない。そこで「健康度調査票」を使って、外部からの評価の視点が入ることによって、明確になる。さらに他の会社の話を聞いて「うちはまずいぞ」という意識も持つ。参加者同士が、「健康」というテーマでしのぎを削る。最終的にはISOのような認証がとれるようになるとステータスが明確になると思っています。

システムやツールを提供する側も、コンソーシアムに参加すれば、それぞれの企業がどういう意識をもって、どういう取り組みを行っているかを知ることができます。さらに自分達も会社なので、システムやツールを提供するだけでなく、自分達の会社の健康経営の視点も取り入れることができます。

 

 

日通システム:

そういった、立場も利害も異なる様々な人たちが、コンソーシアムという場に自発的に集まって、自発的に意見交換をしているのですね。

 

 

高山研究員:

主観的・感覚的なものを、「健康度調査票」によって、数値化・定量化することができます。それがあることによって、ただ集まるだけでなく、分析・評価ができ、みんなが新しい情報を得ることができます。

測定するということは、科学的な第一歩だと思います。それによって、主観的なものではなく、客観的なデータになります。「健康度調査票」はベースライン調査になります。

データを蓄積していくことにより、プラクティスベースでエビデンスを構築していき、

良好な事例を発信していきたいと思っています。

 

 

日通システム:

まさにコンソーシアムは、産学連携ですね。真ん中に「学」があり、「学」の指標がないと、みんな集まってもただの情報交換で終わってしまう。でも「学」があることで、「産」側も情報提供できるし、自分自身を分析してもらえる。そして対策ができて、効果がでる、という姿が実現していますね。

 

 

岡本教授:

「学」というと、どうしても机上になりがちですが、私はありがたいことに30年以上産業医として現場を見てきているので、コンソーシアムでも企業の発言に、ああだ、こうだとコメントをすることができます。実際現場ではこうなっているよ、という経験から意見をすると、企業にもなるほど、と思ってもらうことができます。

 

 

日通システム:

今日の定例会では、日本では9割以上が中小企業なのだから、中小企業を健康にしないといけないとおっしゃっていましたね。

 

 

岡本教授:

「学」の世界ではどうしてもデータを取りやすい上位5%の企業にフォーカスしてしまうことがありますが、実際には日本は産業医もいない中小・零細企業がほとんどなのです。そこを抜きにして「学」といっていても、研究のための研究になってしまいます。研究のための研究では、「こうなっていますよ」という分析はできても「どうすればよいか」という提案はできない。日本を支えているのは、中小・零細企業なのです。中小・零細企業をいかに健康にして、いかに収益を上げられるような体力をもった企業にするということが大事なのです。

 

 

日通システム:

確かに、法律では、企業を規模で定義してスパっと切ってしまうところがありますね。

 

 

岡本教授:

法律はただ便宜的に分類しているだけで、実際には上下の差をつける必要はなく、どんな規模でもみんな同じだと思います。だから、中小企業は、大企業の取り組みを見て、自分達には関係のない別世界の話だと思わない方がよい。中小企業もしっかりと健康になれば、体力がつきます。体力がつけば、いい製品・サービスを提供することができて、顧客もついてきます。

産業医の現場では、私は従業員の隣にすわり、同じ目線で話をします。みんな、話をするだけですっきりして帰っていきます。それだけで全然違います。現場のつらさをわかってあげることがとても重要。ビジネスは現場で起こっているのです。このことは、大企業だろうと、中小企業だろうとみんな同じです。

現場の人が何を欲しているのか?それが分かると会社としての成長にもつながります。

 

 

高山研究員:

今までの保健事業は、顕在化された需要に対してサービスを提供していました。発症した人や、健康データで閾値を超えた人など。でも健康増進はもっと下の潜在的なところにあるものです。そこに新サービスとか新しい仕組みを提供していくことが重要です。医療は顕在化されているものに対して行う。でも潜在的なところの方が大きい。我々は、その潜在的なところに取り組んでいきます。

 

 

岡本教授:

水面下にあるものは、意識して見えるようにしないと、なかなか見えません。この見えない部分が悪さをしています。健康度評価をすることによって、水面の高さをずっと下げて、水面下にあるものを見えるようにすることができます。

 

 

日通システム:

お話を聞いていて、私も、当社として、何ができるか、という気持ちになってきました。

 

 

岡本教授:

それが、まさに目指す姿です。これだけの数の会社が一同に会して、「どうやってよりよい方法で活用するか」、という議論ができる場は他にはありません。自発的に集まって、議論して、外部に発信していく、そんな場にしていきたいと思っています。

 

 

日通システム:

まさに、地域発の、日本が元気になるための自発的な取組ですね。

本日はありがとうございました。

 

 

 

以上