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企業・健保の取組事例

JMA(日本能率協会)HD メンタルヘルス研究所

POSTED : 2015.10.2

 

 

株式会社JMA(日本能率協会)ホールディングス

メンタルヘルス研究所 所長 吉川嘉則様

 

株式会社JMA(日本能率協会)ホールディングス

メンタルヘルス研究所/

株式会社日本能率協会総合研究所

組織・人材戦略研究部 主任研究員 馬場裕子様

 

 

日本能率協会グループ(以下、「JMAグループ」と称す)は、総勢1600名におよぶマネジメントの専門家が、経営コンサルティング・研修、マネジメントに関する調査及び研究、人材の育成及び指導などつうじて、企業、団体等の経営革新を図り、もって我が国経済の発展、国民生活の向上及び国際社会への貢献に寄与することを目的として活動している。

 

JMAホールディングス メンタルヘルス研究所(以下「JMA HD メンタルヘルス研究所」)はJMAグループの一員として、優秀な精神医学の専門家と連携して、良質なメンタルヘルスサービスを企画・開発し、産業界に提供し続けることをミッションとして設立された。

 

JMA HDメンタルヘルス研究所では、東京大学 川上教授との共同研究の成果であるiCBT (internet Cognitive Behavioral Therapy/認知行動療法をベースとしたうつ病の発症予防プログラム」)を、昨年秋より顧客に提供している。

banner_iCBT

 

illust_about

認知行動療法をベースとした「iCBTトレーニング」は東京大学 川上教授によって、働く人のうつ病の発症を1/5に減らすことに成功したと発表されており、現在、職場のメンタルヘルスマネジメントにおいて大きく注目されている。

このプログラムの最大の特徴は、提出した課題に対して、一人ひとりに臨床心理士による専門的なアドバイスが行われるということだ。1週間以内に臨床心理士から課題に対するアドバイスや励ましの言葉が送られてくる。それにより、自分自身のストレス状況を客観的に見直すことができ、ストレス対処についての理解が深まることにつながる。

 

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今回、JMA HD メンタルヘルス 研究所の吉川所長と馬場主任研究員に、メンタルヘルス研究所立ち上げのきっかけと今後の取り組みについてインタビューを行った。

 

「iCBTうつ病予防トレーニング」についてはJMA HDメンタルヘルス研究所のホームページ(http://www.jmahd.co.jp/mental-health/icbt.html)にて詳細に紹介されている。また馬場研究員の論文『健康経営を実現するために積極的なうつ病予防への取り組みを』については、日本能率協会からの経営情報誌「JMAマネジメント」に掲載されており、インターネット上でも公開(http://www.jma.or.jp/activity/magagine/pdf/201501_20-21.pdf)されている。

 

 

 

日通システム:

メンタルヘルス研究所の設立のきっかけを教えていただけますか?

 

吉川所長:

JMAグループの中でも、他社と同様に、心の問題に悩む社員へのケアが大きな課題でした。

また、クライアントからもメンタル不調予防に関する問い合わせも多数あり、予防(未然防止)のための具体的な取り組みを研究し、精神医の先生方にも相談しましたが、これといった決定打が見つからなかったのです。

 

そういった背景があって、何か良い予防法がないか探していたところ、学会で東京大学の川上教授研究室の認知行動療法をベースとした、“うつ病の発症を1/5に低下させる効果が検証されたインターネット活用のeラーニング”についての発表に出会ったわけです。

元来、JMAグループは“マネジメント”の専門団体であり、メンタルヘルス領域については単独で扱える範囲は限られていると認識していました。

 

よって、この領域を深耕するためには、保健医学、精神医学などの専門家と一緒に取り組まなければ、新しいソリューションは生まれないのではないかと考え、川上教授に共同研究の申入れをしたところ、快く受け入れてもらえたわけです。

これが事業のはじまりです。

 

馬場研究員:

日本能率協会総合研究所では、数多くの企業の組織診断を行っています。診断を通じてHRM(Human Resource Management)の問題を取り扱っていると、メンタルヘルスの問題が顕在化してくることがしばしばあります。

 

例えば、組織診断や社内満足度調査などを行っていると、組織・風土を活性化するためには、上司と部下のコミュニケーションや人事制度についてなど、診断後に組織に対していろいろなソリューションを提案することになりますが、仕事が忙しくて疲弊して心が病んでいると、いくら組織の活性化・生産性向上といっても、土台がぐらついているわけだから、その対策なくして組織が元気になることはできません。

 

メンタルヘルスの問題に対しては、マネジメントの問題ととらえ、職場でのコミュニケーションや業務負荷の改善をソリューションとして提案してきました。つまり、“ラインケア”に着目することが多かったわけですが、“セルフケア”の分野での有効なソリューションの必要性を感じていました。

 

日通システム:

JMAグループとしては、自部門の抱える課題やクライアントからの相談、心理的な領域からの組織マネジメントの深耕、そしてJMA HDとしてはこの領域での産業界への貢献といった、複数のニーズがあってメンタルヘルス研究所が設立されたのですね。

 

吉川所長:

したがって、そもそものスタートは、産業界に貢献することをミッションとしている日本能率協会グループのCSR的な意味合いがありました。すでにいろいろな会社が、この領域で課題をもって、独自に取り組みをされていますし、EAP(Employee Assistance Program/従業員支援)という形で事業を営んでいる会社もたくさんあります。当社が他社と同じことをやっても産業界に貢献することはできません。我々はマネジメントの専門組織だから、企業やそこで働く人の心理や行動については多くの情報を保有しています。そういった我々の得意としているところと専門家の知見とをつなぐことによって、これまでの事業者ではやれていなかかったことができるのではないか、と考えています。

 

日通システム:

馬場様の論文の中で、

『ある企業において、ストレスフルな状態の人は、仕事時間のなかで集中できていない時間が7割以上あるというデータがとれました。』

という内容があります。

ストレスフルな状態だと、職場にはいても、パフォーマンスは本来の3割も発揮できていないという大変興味深いデータですね。

 

馬場研究員:

あるIT企業の組織診断を分析したときに、ストレスや不安が多いほどパフォーマンスが下がるという結果が出ました。ストレスが高い人程、集中できていない時間の割合が高いことになるという、プレゼンティーズムの問題を明らかにした一つの数値データと言えます。

そうなってしまうことを未然に防ぐことが重要であり、事前に予防ができたら生産性も上がるのです。普通に働いているように見えても実は高ストレスで生産性が上がっていない人がいるとしたら、それは企業にとっては大きな損失です。

心をむしばむようなストレスを減らすことができれば、生産性が上がるのです。

 

日通システム:

メンタルヘルス研究所としては、そういった状況になってしまう前に、何ができるかということを研究するという位置づけなのですね。

 

馬場研究員:

研究をするだけではなく、形にしていかなければと思っています。

JMAグループのリソースの中で、もともと組織を元気にしたり、働く人を教育したりとか、そういったことをやってきました。

そのためのソリューションは、組織内のコミュニケーションの活性化とか、上司のマネジメントとか、他部署との連携などですが、実は、そういったソリューションは、メンタルヘルスの予防に貢献しているものと同じだと思います。

出発時点がメンタルヘルス対策や予防なのか、それとも組織の活性化や社員満足度向上なのかの違いで、実際の対策としては共通点が多い。

そこで、そういったソリューションをうまく組み合わせていくことで、JMAグループのもっているノウハウがメンタル面での予防に使えるのではないのか、と思います。

 

日通システム:

次に認知行動療法をベースとしてうつ病予防プログラムについて教えてください。

認知行動療法は、もともと予防よりも治療の側面の方が大きかったのではないでしょうか?

 

吉川所長:

認知行動療法にはいろんな手法があるのですが、「産業界での予防」という目的のためには認知行動療法のどの手法を、どう組み合わせれば効果があるか、という研究を東大の川上教授はしっかりとされていました。また、理解しやすくするための工夫が多数講じられています。マンガのeラーニングと通信教育の課題を組み合わせた構成も、分かりやすさを追求した結果であると思います。

 

認知行動療法の手法をいろいろと組み合わせることによって、様々なソリューションを提供できるため、川上教授とは、認知行動療法を使った新たなソリューションを開発しています。

 

日通システム:

今回の事業では臨床心理士が大きな役割を担っていますが、「認知行動療法を身につけた臨床心理士」という点が重要なのですね。

 

吉川所長:

今回の「iCBTトレーニング」については、たくさんの臨床心理士の方が共感して、参画してくれたことで、商品とすることができました。現時点で50数名の臨床心理士が参画してくれています。

臨床心理士の中には大学で教える立場にいたり、専門書を何冊も出版している方など、とても優秀な方々ばかりです。困っているビジネスマンを手助けしたいという使命感というか、意識の高さがすごく、一緒に仕事をしていて本当に頭がさがる思いです。

 

 

馬場研究員:

彼らは、通常では対面でカウンセリングを行うプロフェッショナルです。しかし、我々の今回の事業は、対面ではなくネットを通じてアドバイスを行うことになります。また各臨床心理士に、受講者の詳細なプロフィールを明かすことはありません。

そのため、Face to Faceのカウンセリングよりもはるかに難しいことになります。そこを、臨床心理士の方々が、長い時間をかけて、どうやったら画一的な、安心できるアドバイスができるかを必死になって考えて取り組んでくれた結果、今のサービスにつながっています。実際に「iCBTトレーニング」を受講された方からは、臨床心理士のアドバイスで「心の問題に対し、多くの気づきを得た」とか、「カウンセリングを受けたようで、ストレスが軽減できた」といった感想を数多く得られています。

 

日通システム:

共感した人が集まってきて、この取り組みの良さが広がっていく。それがまさに理想の姿ですね。ただそのやり方では時間がかかりますね。

 

吉川所長:

ストレスチェック制度が法施行されたので、これからは、従業員のメンタル面への関心が高まると思います。

予防するためにどういう手段があるか、どういうケアができるのか、未然防止について企業経営者が考えていかれるようになると思います。

時間がかかると思いますがが、まじめに取り組んでいれば、我々の事業は受け入れられていくだろうと思っています。

 

馬場研究員:

「保険料削減」という考え方で、メンタルヘルス対策を行うのもよいですが、やはり、いかに活き活き働ける職場をつくるかということが重要だと思います。

“ワークライフバランス”も時間がかかりましたが、定着しつつあります。今は、当たり前のように、若い人が、そういうことがしっかりしている会社で働きたいと思うようになりました。“メンタルヘルス対策”をしっかりしている会社が選ばれる時代になってきていると思います。

 

吉川所長:

ハラスメントについても、社会が厳しくなり、ハラスメントに泣き寝入りする時代ではなくなりましたが、ここまで来るのに大分時間がかかりました。

心の問題についても、いずれ世の中全体を通じて、認識が変わるようになると思います。

心の問題を抱えていない人はいません。誰もが、家庭の問題、身体の問題、経済問題など、いろんなものを抱えて働いています。

これまではそういうものは個人の問題だから、会社は関与できない、個人の自己責任でやるしかない、ということでしたが、それが会社の業績にも影響するということになれば、変えられるものは変えるべきという雰囲気になってくると思います。

今までは、対策しようと思っても、方法がありませんでしたが、今は、具体的なソリューションがある。

ぜひ使ってもらいたいと思います。

 

日通システム:

貴社にとっては、学問であり、実践であり、挑戦ですね。

 

吉川所長:

今は、営業活動とかではなく、普及活動と思っています。一人でも仲間が増えていくことを目指しています。

ただし、世の中で影響力をもつためには、事業としての成功を考えなければならない。それが今後の課題だと思っています。

 

日通システム:

本日はどうもありがとうございました。

 

以上